マサオのブログ

よもやま話ですが、何かのお役に立てれば幸いです。

ワールド・オブ・ライズ

久しぶりに面白い映画を観ました。

※ネタバレ注意

お決まりの午後のロードショウですが、いつも録画しておき、興味のある物だけを観ます。

題名は「ワールド・オブ・ライズ」2008年公開、監督リドリー・スコット、主演レオナルド・ディカプリオ、ジャンルはスパイ映画です。

007やミッションインポッシブルの様な娯楽作品ではなく(これはこれで好きですが)、CIAの諜報機関の工作活動を描いた物です。

ディカプリオは優秀なエージェントですが、スーパーマンではありませんので、あくまでもリアリティを追求した作品です。

人工衛星からの監視システムや、爆破テロのリアルなシーンは、本当に驚かされます。

最初のシーンで、ディカプリオの上司役のラッセル・クロウが、大統領もしくは政府高官にテロとの戦いを語るシーンは、分かりやすくこの状況の本質を伝えています。

ソマリアでのデルタフォースの活躍を描いた同監督作品「ブラックホークダウン」もそうですが、こういった作品は、リアルな現在の実戦や装備、戦術を伝えてくれますので、現実を理解する上で、とても良作だと思います。

なぜイラクに圧勝したアメリカが、その後、自爆テロで4千人もの自国兵士の死者を出したのか、いかに泥沼化しているのか想像できます。

この役作りで20kg増量したラッセル・クロウは、安全な本部で指示を出し、現場のディカプリオの苦労を理解しない様は、営業マン時代の昔の私の分からず屋の上司と見た目も性格もそっくりで、思わず苦笑してしまいました。

この人も優秀なのですが、こういったキャラクターは万国共通なのでしょう。

それにしてもディカプリオは、いい俳優です。

演技力は若い頃から定評がありましたが、最近は本当に良い作品に沢山出演しています。

正直、出世作のタイタニックの頃は、単なるアイドル的な存在に見え、まったく興味はありませんでしたが、最近の彼は男性からも支持される、素晴らしい俳優だと思います。

同い年なので、心情的にも応援したくなりますし、今後40代の彼が見せるであろう作品群には大いに期待しています。

国の安全保障、工作活動、テロ活動の実態やその戦い、日本でも秘密保護法がようやく通りましたが、世界各国が行っている諜報活動や工作活動、それに対する防衛活動を、日本は自前でやってこなかった(もちろん公安はありますが)のは、愚かで腹立たしく、そしてもどかしさと危機感を感じました。

日本はかつて日露戦争でも工作活動において、明石源元二郎が現在のレートで400億円以上の活動資金を使って、対ロシア工作を行いました(これがレーニンを助け、後のソ連を作った要因の一つになったのは歴史の皮肉ですが)

これが勝利に結びついた、大きな要因でもあると言われます。

ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世に「明石は1人で陸軍10個師団に匹敵する」と評されたほどです。

昔は陸軍中野学校(スパイ養成機関)もあり、本家忍者の国である日本は、本来が諜報活動が得意なはずですので、今後は国益や安全保障の為にも、今後は優秀なスパイを養成する必要性を感じました(すでにやっているかもしれませんが)

一番印象に残ったのが、ヨルダン情報局の責任者ハニ・サラームが、CIAと対立しながらも最後の最期で、古典的な方法でテロリストのボスを捕えたのは、兵器でもテクノロジーでもなく、やはり最後は「知恵」や「信頼」そして「人」との繋がりだと言う、今の傲慢になっているアメリカに対する問題提起にも感じられました。

私には、まるでハニ・サラームが、調略の天才「人たらし」と言われた豊臣秀吉に見えました(キャラはぜんぜん違いますが)

小牧長久手の戦いなど、秀吉が天下取りで見せた数多くの調略は「戦略的勝利は、戦術的な勝利を覆す」と言う意味が理解でき、とても感銘を受けます。

古今東西、いくさは戦わずして勝つのが最良です。

この調略や工作は、知恵も大切ですが、一番は相手の懐深くに飛び込み信頼を築けるかどうかです。

結局これは、何も国同士の大きな話ではなく、私たち個人の人生でも十分応用できる要素だと思います。

映画のラストでディカプリオは、冷徹な上司に反発し、CIAを去り、その優秀さゆえに入り込み過ぎ、理解を深めたイスラム社会に溶け込む道を選びます。

考えさせられ、学ぶ要素がたくさん詰まったこんな素晴らしい作品を作れるなんて、巨匠リドリー・スコットは、やっぱり凄いです。