マサオのブログ

よもやま話ですが、何かのお役に立てれば幸いです。

弱者から新しい物(価値観)が生まれる

先日、実家に帰った時の話を書きましたが、その時に読んだ漫画「風の谷のナウシカ」全7巻について、少し書きます(※ネタバレ注意)

この作品は、宮崎駿さん不朽の名作で、いわゆるスタジオジブリの初めて(当時まだジブリはまだ無く、正確には違いますが)のオリジナル長編作品です。

宮崎アニメの代表作ですが、実は宮崎さんご本人原作の漫画だとは、はじめは知りませんでした。

それまでは、原作漫画がある話は聞いていましたが、実物は私がまだ高校生に時に、本屋で見たのが最初です。

読んでみると、とても面白くてハマりましたが、当時はまだ6巻までしか出ていませんでしたので、物語の結末がどうなるかは知りませんでした。

社会人になるときに、読みためた漫画類は全部処分してしまったので、その時にナウシカも捨ててしまいました。

その後本屋で完結編が出たのを知った時には、「もういいや」と思いスルーしてきたのですが、正月の帰省で、兄が全巻大人買いしていたので、思わず一気に読んでしまいました。

実に20年以上ぶりです。

ネットなどで、結末は知っていましたが、それでも面白かったです。

戦争や環境破壊に対する問題提起と、結末では人間の滅亡を肯定しています。

ナウシカの世界の人間たちは、いわゆる人造人間であり、今の人間とは違う存在です。

世界が浄化されるまでの「繋ぎ」として、自分達を造った人間に対するナウシカの怒りや行動(冷凍睡眠中の人間を焼き払った)は当然ですし、少しショッキングではありますが、宮崎さんの言いたいことは理解できます。

この完結は、永井豪氏の漫画「デビルマン」にも似ています。

この作品でも、人類は滅亡します。

読んだ当時、小学生の私にはとてもショックでしたが、人間はこの世の支配者でも何でもなく、これまで滅亡した恐竜や他の動物と同じ、地球上のひとつの種族に過ぎないという事実を突きつけられました。

子供の私にとって、事実を知り、相手の立場に立ち、物事を離れて考え、客観的かつ物事を柔軟に思考する上での訓練、人生にとって非常に役立つ学びがありました。

私の親世代は、漫画やアニメなんてただの稚拙な娯楽だという認識しかありませんでしたが、私にとってはデビルマンナウシカなどの作品から学びえたことは、学校の授業では学びえない非常に価値が大きいものでした。

少々強引な考えかもしれませんが、自国を占領されるような敗戦を経験したことが無いアメリカ人には、ハリウッドなどで決して書かない(書けない)ラスト(価値観)だと思います。

強者は自らをかえりみないし、なんでもUSA!USA!です(もちろん例外は沢山ありますし、最近ではそれも増えて来ているので良い傾向ですが)

お隣の老大国も同じマインドで、近頃世界から、ひんしゅくを買っています。

映画やアニメ、政治がごっちゃになりましたが、敗戦で国土がボロボロになった、日本だからこそ書けたのだと思います。

冷徹な自己批判や分析の結果です。

こういった文化も、社会背景や教育、科学技術の発展と密接にリンクしています。

宮崎氏や永井氏の価値観は、戦後の日本の自虐史観の功罪の功の部分だと思います。

アニメ「パトレイバー」が実写化されることになりましたが、押井守監督のこのシリーズ作品も、問題提起に満ちていますし、今見返すと、25年以上前によくここまで正確に未来の社会問題を予測出来るなと、ほとほと関心してしまいます。

彼らも今でこそ巨匠ですが、昔はマイノリティーでした。

低予算で3Kの職場でも、純粋によりよい作品作りを頑張った結果でしょう。

「弱者から新しい物(価値観)が生まれる」

私たちの祖先である類人猿は、豊かで安全な森から猛獣に追い出され、何もない荒野で生きるしかなく、そこから知恵を絞って、道具を生み出し、地上の支配者になりました。

オタク文化も、いつの間にか「クールジャパン」になりましたが、傲慢になっていると、いつか素晴らしい作品が作れなくなってしまいます。

事実、巨匠たちに続く後継者が、少ない気がします。

しかし繁栄後の衰退は、仕方がないことかもしれません。

なんにせよ、この時代に生まれ、沢山の素晴らしい作品を楽しめ、その繁栄と衰退を見られるのは、とても幸せな事かもしれません。