JM
先日、午後のロードショウで「JM」(95年)を見ました。
主演はキアヌ・リーブス、そしてビートたけしがヤクザの親分として出演しています。
この映画は、もうずいぶん前に一度見たことがあります。
「スピード」でブレイクしたキアヌ・リーブスが主演ですし、なにより、世界のタケシのハリウッド初出演作品です。
「戦場のメリークリスマス」で、映画デビュー(以前にもちょい役はあったそうですが)してから12年後、もう監督業はスタートしており、すでに評価はされていたものの、それでも当時、よく日本のお笑い芸人に、ハリウッドから出演依頼が来たなと感心したものです。
北野監督作品は、ヤクザなどの暴力シーンが多いので苦手なのですが、初監督作品の「その男凶暴につき」は、本当に衝撃だったことを覚えています。
それまで見た映画とは違う(それほど見たわけではありませんが)、この人は才能の塊だと思いました。
元は漫才師なのに、本当に不思議な人物だと思います。
なにより感心するのは、無名の俳優を使い、その作品の世界観に観客を引き込むのが上手いことです。
北野作品からブレイクした役者さんは、数多くいます。
スウェーデンでは、監督自らが街へ出て、自分の作品のイメージにあった人をスカウトするそうですが、北野監督の狙いもこれに近いのでしょう。
私もこの手法は大賛成です。
事務所の力で売れている時の人や、他の作品のイメージが強すぎないひとが、主役や準主役をやれば、素直にキャラクターに感情移入出来るからです。
そんな「世界のタケシ」の映画人としての才能を掘り起こすきっかけになった「戦場のメリークリスマス」は、彼の人生を大きく変えた作品ということになります。
当時35歳で、俳優としてほとんどキャリアもなかった彼が、その6年後にはメガホンを取り、12年後にはハリウッド作品出演ですから、人生分からないものです。
「JM」については、正直さほど面白い作品でもないのですが、行き過ぎた資本主義社会が、とんでもない格差社会を生み、大企業が世界を牛耳ってる状況や、アジアの台頭、ヤクザの世界的な認知、コンピューターネットワークと人間の脳を直結させるアイデアなどは、時代を先取りしていてとても感心させられます。
去年話題になった眼鏡型のウェアラブル携帯や、アニメの攻殻機動隊、その後のキアヌ・リーブスの代表作になった「マトリックス」にも影響を与えている気がします。
それと、私はキアヌ・リーブスが好きです。
この人の静かで優しげな雰囲気は、日本の竹野内豊にも少し似ている気がします。
伝え聞く孤独で質素な私生活は、ネットでは良くネタされていますし、彼のプライベートは決して幸福ばかりではないようです。
この作品は、他にもドルフ・ラングレンも出ていて、怪僧ラスプーチンの様な怪しいキャラを演じており、いい味出しています。
作品の公開年である95年は、ウィンドウズ95の発売年で、インターネット元年とも言われています。
確かにこの年を境に、その後といろいろ社会が変わった気がします。
アニメではエヴァンゲリオンが放送されましたし、地下鉄サリン事件や阪神大震災もありました。
上手く言えないのですが、なんとなくこの20年ほど、ずっと社会を覆っている得体のしれない不安や暗さ、重みを感じます。
それは単に不景気や「失われた20年」では説明できないものです。
もしかすると文化的に、社会が変わったからかもしれません。
携帯電話やネット文化のはじまり。
価値観も昭和色がなくなり平成色へ。
最近ではもう停滞してしまっている感じがしますが、95~2000年代初めころまでは、本当に変わりました。
なんにせよ、95年は、いろんな意味で忘れられない年です。
この作品も、そんな95年の一部だと思います。