ラウトカ学生寮強盗事件 その10
救急用の診察室に怪我人の先客がいるらしく、病院に着いてからほんの少しだけ待たされました。
その間も血が止まる様子はありません。
病院に対する説明等は、付き添ってくれた友人が全部やってくれたので助かりました。
やがて私の順番になり中に入ると、フィジー系男性医師が1人と4,5人の女性看護師がいました。
傷口を見て、すぐに止血が必要なのでベッドに寝る様に指示されました。
看護師達は私の傷を見て、みんな驚いた顔をしていました。
傷は頭の左側頭部の上なので、私はまだ自分で傷を確認していません。
何故かほとんど痛みが無かったせいか、出血はあるけれど自分ではそれ程ひどいとは思っていませんでしたので、寮の生徒たちに「これはひどい」と言われても、あまりピンと来なかったのですが、怪我を見慣れているはずの看護師達の反応を見て、少し不安になりました。
ガーゼなどで十分血をぬぐい、消毒をしたあと縫合するまでを、ひとりのベテランの看護師が中心にやってくれました。
このベテランの看護師が、ずいぶんとキャラの立った人で、ひとことで言うならば「ハイテンションおばさん」、見た目はウーピーゴールドバーグを可愛くした様な感じでした。
よくアフリカ系やポリネシア系に良く見られる、ご陽気で声が大きく、些細な事でもなぜかひたすら笑ってる感じのひとでした。
もっともこのタイプはフィジー系の女性には多く、別に珍しくはないのですが、この方はその特徴が顕著でしたし、何より声がアニメ声だったのでそのギャップがとても面白かったです。
私に対する態度は非常に優しく、アニメ声で「痛かったでしょ、かわいそうに」などと声を掛けながら、周りに指示を出しつつてきぱきと仕事をされていました。
私が少しでも痛がると手を止めて「Oh!Sorry my dear ~ !」と謝ってくれるのですが、手つきは結構乱暴だし、しかもアニメ声なので、そのギャップに笑いをこらえるのに必死でした。
麻酔なしで結構痛かったのですが、その方のおかげで気を紛らわす事が出来ました。
あとで確認すると傷は5,6センチあり、6,7針縫合されていました。
素人目には縫合数が少ない気がしましたが、ここフィジーでは万事がこの様な感じなので、仕方がないと思いそれ以上は気にしませんでした。