ラウトカ学生寮強盗事件 その23
電話から数日後、私達は学校からすぐ近くにあるラウトカ地方裁判所に向かいました。
管理会社の日本人スタッフも1人付き添ってくれました。
裁判所は毎日の様に前を通っていましたが、まさか中に入る日が来るとは思ってもみませんでした。
敷地に入ると中は広く、表通りからは入り組んでいて中は見えなかったので以外でした。
建物は5、6階建てで外観は日本の学校の校舎や病院に近く、ラウトカタウンには2階建て以上の建物は珍しいので、これでもかなり近代的に見えました。
私は建築の事は分かりませんが、タウンにあるほとんどの建物は素人目に見ても地震でも来れば一発で倒壊しそうな代物ばかりで、ドアなども立てつけが悪く、壁もコンクリートの打ちっぱなしで、驚いたことにほとんど手作業だけでそれらを作っていました。
しかしこの建物はお役所だけあってフィジーにしては頑丈そうでした。
中に入ると奥にある小さな会議室に通されました。
しばらくすると黒のスーツを着た30代前半位のフィジアン女性が現れました。
彼女はフィジー系とインド系のハーフらしく非常にきれいな方でした。
フィジー系とインド系はお互い仲が悪くハーフの方はとても珍しい存在で、
1年間滞在してもほとんどあったことはありませんでした。
フィジーでは毎日夕方のTVでFiji Oneと言うニュース番組を放送しているのですが、そのメインキャスターが同じくハーフの女性で、とてもきれいな方なのですが、私が知る限りではその女性位ですので大変珍しい存在です。
現地の方も言っていたのですが、フィジー系とインド系のハーフはなぜか美男美女が生まれて来るそうです。
しかし彼らはお互いの宗教や文化、法律、経済的な問題で対立し、なかなか婚姻は難しい様です。
そう言う事情からも、ニュースキャスターや裁判所のスタッフ(後に分かりましたが実は検事さん)など、高い教育を受けた人に限られ、おそらく社会的地位や収入の高い家庭でないかぎり実現が難しいと思われます。
それとも差別や偏見をバネに相当努力されたかのかも知れません。
その日は裁判当日の打ち合わせで、簡単な説明と証言する内容や事件のことを思い出して整理しておいてくれとの事でした。
法廷は数日後に開かれる予定で、説明を聞いて否応なく緊張感が高まりました。