始まりは「なんちゃって」から
昨日、日本料理が、世界文化遺産登録された記事を書きましたが、世界では今「なんちゃって日本料理」が蔓延していると、よく報道されています。
日本食を知らない外国人が、ブームに乗って日本料理風のお店を出店して、おかしな日本食を出しているとの事。
我々からすると、なんとも「けしからん」気がしますが、思えば日本食は、このなんちゃって料理のオンパレードです。
家庭料理の代表選手であり、おふくろの味「肉じゃが」は、何と、もとは「ビーフシチュー」で、実は「なんちゃってイギリス料理」だと言う説があるそうです。
日露戦争で連合艦隊を指揮し、記録的大勝利を果たした、かの名提督「東郷平八郎」。
彼が、若き日のイギリス留学時代に食べたビーフシチューの味が忘れられず、舞鶴鎮守府司令官時代に、コックにビーフシチューを作れと命じたところ、ビーフシチューを知らないコックが、東郷に聞いた材料と、手元にある調味料を使って想像で作ったのが始まりだそうです。
それが以外と美味かったので、今日まで残っています。
ビーフシチューから、まったく違う新しい料理が生まれたのです。
この話は、「舞鶴」ではなく海軍の本部があった「呉」の説もあり、お互い我こそが発祥地だと唱えている模様。
他にもイギリス海軍経由で伝わった「カレー」も、欧風カレーを日本人がアレンジし、今日の「日本のカレーライス」になりました。
やがてカレーライスは、日本の国民食と呼ばれるまでになり、今では大手カレーチェーン店が、海外にどんどん出店しています。
カレーは、言わずと知れたインド料理ですが、それがイギリスの植民地支配でヨーロッパに渡り、やがて日本にもたらされ、オリジナルとは違う食べ物に変化して、世界中に広まろうとしてます。
天ぷら、カステラは、元は「なんちゃってポルトガル料理」だし、ハンバーグ、とんかつ、コロッケ、オムライスなど、明治、大正時代に発展した、いわゆる「洋食」も、元になったオリジナル料理があり、それを日本人好みにアレンジし、改良した物です。
中華起源の「ラーメン」は、日本で、ほとんど芸術的な進化を遂げました。
今では、どれも立派な日本食です。
また逆バージョンとしては、アメリカで生まれ、逆輸入した寿司「カリフォルニアロール」は、「サラダ巻き」として、日本でもお馴染みの味になりました。
こうして考えると、なんちゃって料理は、文化の交流や歴史と深いつながりを持ち、異文化同士のコラボレーションとも言えます。
世界中に伝わった日本料理が、これからまったく新しい物に進化し、発展していけば面白いと思います。
伝統文化の継承、保護は大切にしなければなりませんし、日本食の評価が下がるような「悪質な」なんちゃっては排除すべきですが、私的には、創作的で美味しい「なんちゃって」は大歓迎です。