繁栄と衰退のセオリー
携帯をソフトバンクのiPhoneに変えてもう3ヶ月ほど経ちますが、未だに使いこなせません。
今の生活では、ほとんど携帯を触ることが無いのと、私自身がアナログ人間なのが一番の原因ですが、ドコモのガラケーを使っていた時よりも月額料金が安くなったので、それだけでも満足です。
私が初めて携帯を持ったのが2000年の春で、それからずっとドコモ一筋でした。
10年以上契約し、最高位のプラチナ会員にまでなっていたものの、電話番号も変わらず今以上料金が安くなると熱心に営業をかけられると、別にドコモに義理もないので、流石にめんどくさがりの私でも変えてしまいます。
私のような人間が変えるくらいだから、相当ソフトバンクに食われているのだろうと思っていたら、本当にそうだった様です。
昨日かなり前の週間ダイヤモンドを、友人に貰い読む機会があったのですが、その中にドコモの特集記事が有りました。
ドコモはいわずと知れた、日本を代表する大企業です。
iモード契約数は、ピーク時で約4900万人でしたので、日本人の約半数近くが契約していた事になります。
それが昨年の契約者数が、約2400万人らしいので、ピーク時の約半数です。
私は去年開業し、携帯を出張時にも転送で使いますし、経費として申告するために領収書が必要なのですが、ドコモは昨年初め辺りから郵送で送ってくれる紙の明細がなくなりました。
何でもペーパーレスになるのは、エコで良いイメージですが、実際申告時になると不便です。
しかもHPから利用履歴を半年前までしか、遡ってプリントアウト出来ないとの事なので、昨年分全部を出せませんでした。
銀行口座などの履歴はかなり昔まで遡れるので、その点でも非常にサービスが悪くなっていると感じました。
そんな小さなことも重なって、ドコモとの契約を切りました。
やはり何事も「一事が万事」です。
ドコモの今の体質が、そこにも表れている気がします。
かつて日本を席巻したiモードの開発には、潤沢な予算を与え、優秀なスタッフを集め、「金はある、何をやってもいい」と自由にさせたそうです。
そこから素晴らしい結果が生まれました。
それを読んで、私はよく似た話を思い出しました。
その昔、ゲームソフトのスクエア社(現スクエアエニックス)が大人気ソフト、ファイナルファンタジーシリーズの開発スタッフを、ハワイかどこかのリゾート地に別荘を一軒まるごと与え、そこでゲームの開発をさせたそうです。
アイデアに煮詰まると、目の前のビーチで思いっきり遊びリフレッシュしたあとは、またプログラムに戻る生活だったそうです。
フェイスブックの創設者マークザッカ―バーグの成功を描いた映画「ソーシャルネットワーク」にも、まったく同じようなシーンが出て来ます。
かつてのドコモのiモード開発プロジェクトチームは、まるで高校の部活動の様な楽しい雰囲気だったそうです。
クリエイティブな人間は、窮屈な状態では力を発揮出来ません。
経営者やプロデューサーなど、組織を運営する人の一番の仕事は職場の環境作りです。
当たり前ですが、実際の業務はしません。
ところが、シェア独占の一人勝ち状態になると、事務方の経営者の力が増してきて、管理体制強化に走り、やがて社内の自由な気風がなくなり、開発どころか本来一番大切なユーザーの立場をも無視し始めます。
そして徐々に衰退する。
そうなると後の祭りです。
ドコモの現状を見ていると、まさに教科書通りともいえる企業の繁栄と衰退の変遷を見て取れます。
そして何もこれは企業だけでの事ではなく、何かのグループや個人レベルでも同じことが当てはまります。
ずっと良い状態も、悪い状態も続きません。
世の中は、なにごとも永続しないのです。
将来ドコモは改革を断行し、また復活するかもしれません。
衰退産業に身を投じて、大きな仕事を任されるのを期待したり、そこでのノウハウを学んだりするためにあえて身を投じる人もいます。
そこで改革を成功すれば、中興の祖になれるでしょう。
自分や周りの状態を冷静に見極め、適切に対応する、それも幸福になる大切な条件です。