銀河(大阪)の歴史がまた1ページ
今年は、大坂夏の陣からちょうど、400年目に当たります。
歴史上この戦は、長い戦国時代最後の合戦と、位置付けられています。
そのいわくつきの年に、また大阪の地で、大きな出来事がありました。
それは、いわずと知れた、先日の「大阪都構想の住民投票」です。
結果は、反対が賛成を上回り、都構想は否決され、現職の橋下市長は、公約通り任期いっぱいで政治家を引退されることに。
会見で橋下市長は、「民主主義は、本当に素晴らしいシステムだ」とおっしゃられていました。
自分は、ワンポイント・リリーフだとも。
「政治家は嫌われてはダメ」「権力は持ち回りが良い」など、本当にこの方は、客観的に自分を分かっておられるなと、感心しました。
それにしても、1万票差(0.8%差)というのは、劇的です。
「事実は小説より奇なり」と申しますが、本当に橋下さんの人生は、劇的過ぎます。
今回の件で、大阪は以前の公務員天国、生活保護の不正自給天国、バスレーン監視員の年収が1千万円の時代に、逆戻りするのかどうかわかりませんが、橋下さんの目指した大改革は、頓挫してしまいました。
維新の党も、事実上の瓦解だと思います(現職の議員さんには、申し訳ないですが)
この結果は、安倍政権が目指す憲法改正にも影響がでるとも言われています。
賛否で、はっきり地域差も出ました(北は賛成、南は反対)
そういった大阪の南北問題も、浮き彫りになりました(東京にも東西問題はありますが、まだそこまで深刻な格差ではない気がします)
私も30歳まで大阪市民でしたので、この問題は肌で感じます。
私が住んでいた北エリアは、大阪の中心的商業地で、清潔で近代的なのに比べ、南エリアに行くほど、街も汚く貧困層が増え、治安も悪くなります(まさにマスコミで悪意を持って報道される大阪のイメージそのもの)
年齢層でも、はっきりと賛否に差が出ました。
20代~60代までは賛成が上回り、70代から圧倒的に反対が増えます。
皮肉なのが、若い世代が投票していれば、結果は変わっていた可能性が高いことです。
それに、大阪で経営者やサラリーマンをしている賛成派の人々は、大阪市内ではなく、吹田市などの大阪府下の市や、お隣の兵庫県の西宮市などのように、いわゆるベッドタウンに住んでいる人が多く、今回投票権が無かったという皮肉です。
税金の多くを、企業などの経済活動で、市外の住人が収め、市内に住んでいる者や既得権益を持つ公務員が、その恩恵にあずかる。
対立構図も、ややこし過ぎます。
安倍政権は維新を応援しているのに、地元の自民党の大阪府連だけは反対、なんと民主党や共産党とも組んでいるのですから、もうカオスです。
ネットで見ていて驚いたのが、橋下市長を反日勢力だといって、保守層までが叩いている始末です(いやいや、民団も、総連も、共産党も、都構想反対してるし)
私が一番笑ったのが、「橋下市長は都構想後に、大阪民国として独立しようとしている」という斜め上の意見です。
大阪人を代表して、いわせてもらいますが、東京に勝とうとか、取って代わろうなんて誰も思っていません(不可能です)
なんにせよ、要するに、既得権益と改革派の戦いだったのでしょう(老人対、現役世代の戦いとも)
いまさら何を言っても仕方ないですが、これで大阪の衰退は避けられなくなりました。
もし都構想が実現していれば、将来大阪に戻ってもいいかも、とも思っていたのですが、その気も失せました。
今後は、若者の流出も止められないでしょう(私は、もう若くありませんが)
地方が活性化しないと、少子化も益々加速してしまいます。
若者が東京に出て来ても、ブラック化した職場では、生活だけで精一杯で、結婚どころではありません。
その意味でも都構想は、その先にある道州制や、地方分権にも繋がっていたのに残念です。
地方分権というと、今の沖縄県知事の様な人が出てくると、問題だという指摘もありますが、橋下市長も会見で、「国の安全保障は権限の外です」と明言されていました。
それに東京一極集中は、大地震や自然災害などにあまりにも脆弱です。
あくまでも首都は東京ですが、大阪に副首都しての機能があっても良いと思います。
従軍慰安婦問題にしても、朝日新聞の植村記者が虚偽報道をした、という事実を引き出した最初のきっかけは、橋下市長の発言からでした。
常に正論でズバズバやっていたのは、多くの敵を作り、結果的にはマイナスでしたが、彼が口先だけでなく、自身の給料をカットしたり、カラ残業の廃止や、さまざまな市長としての実績を見れば、いかに本気で公務員改革をしようとしていたかだけは、正当に評価するべきだと思います。
今回の結果をきっかけに、将来、案外簡単に都構想が実現するかも知れません。
その昔、ローマを改革しようとしたカエサル(シーザー)は、志半ばで、暗殺されました。
しかし、その後、アウグストゥス(オクタビアヌス)によって、帝政が始まりました。
日本でも、信長が、天下統一目前で倒れ、秀吉、家康が天下を継ぐことに。
非業の死は、改革者の運命なのかもしれません(もちろん、橋下さんは死んでいませんが)
本人のいう通り、「負けても、死ななくても良い民主主義」は、やはり素晴らしいシステムだと思います。
よりフェアな社会を目指した男が、フェアな民主主義というシステムによって、敗北した。
既得権益を守ろうとしたひとや、当事者意識が欠如していたひと(投票に行かなかったひと)にも、今回の結果は良い問題提起になったと思います。
いや、それどころか日本全体が、民主主義とは何か、自分たちは主権者であり、ひとりひとりが当事者なのだと、考える良いきっかけになったのでは、と思います。
その意味でも橋下さんは、とても大きな仕事をされたと思います。