ラウトカ学生寮強盗事件 その15
翌日ガーゼと包帯を変えるために、再びラウトカ病院に行きました。
その時、管理会社の現地スタッフの女性が付き添ってくれました。
日本語も少しわかるとても陽気なフィジアンです。
確か学校は休校になっていたと思います。
病院でガーゼと包帯を変えてもらい、自分でも交換できるようにと予備のガーゼと塗り薬を頂きました。
その塗り薬が何故か鮮やかな紫色でした。
日本では絶対ない色だと思います。
時間が経つとガーゼに薬がしみて来て、紫色に染まります。
頭が包帯でぐるぐる巻きの上に紫色のシミが付いているのでかなり目立ちます。
髪の毛にも付いて紫に染まるので、お婆さんみたいでいやで恥ずかしかったです。
診療後、支払いの件が気になって付き添いの人に聞くと、その時初めてフィジーの公立病院は無料だと教えてもらい驚きました。
では昨日のレントゲン技師はやはり詐欺だったと分かり、そのことを付き添いの人に伝えると「それは誰だ」聞かれ、教えると彼女は血相を変えて奥に走って行きました。
あとを追うと病院の守衛らしき人に今回の件を説明してくれていました。
説明を聞いて守衛さんは大きくうなずくとレントゲン室の方向に歩いて行きました。
それを見届けひと安心して私たちは病院をあとにしました。
私は詐欺に遭わずに済んでほっとするのと同時に、あのレントゲン技師は驚くだろうと想像するとなんだか可笑しみがこみあげてきました。
臨時収入を期待していたら守衛が来たなんて笑えます。
しかしただの未遂ですし、知らぬ存ぜぬで通すでしょうが、これで彼の信用はダダ下がりでしょう。
それにしても公立病院勤務のレントゲン技師がそれですので、この国は油断も隙もないと思いました。
貧しいこの国では収入も安定している職業なはずなのに、隙あらば他人の金を奪おうなんて考えるのはお国柄でしょうか、とにかくこう言う手合いが多くその後は対処も慣れましたが、この頃は事件のこともありやりきれない思いでした。
しかし彼らの名誉のためにも書きますが、大多数の人々は正義感もありモラルやマナーのある優しくとても親切な人たちです。