ラウトカ学生寮強盗事件 その17
月曜の授業が無事終わり放課後、頭の包帯を変えるために病院に向かいました。
前回と同じフィジアンの女性スタッフが付き添ってくれました。
ラウトカは隣町で遠いので、包帯を変えるだけなら地元の病院でいいだろうと言うことになり、ナンディタウンの学校から一番近い公立病院に行きました。
ナンディと言っても広く、学校は正確には「ナマカ」と言う所にあり空港から近くて観光客向けのお店や施設が多く、フィジーでは比較的に富裕層が住む地域でした。
小さな街ですので公立病院も小さく、大きさは普通の街の開業医と変わりません。
それでも中に入ると患者さんでいっぱいでした。
付き添いの女性が交渉してくれて何故か待たずに診療室に案内されました。
少し気がとがめつつ中に入ると、ドクターが一人、50代位のフィジアン女性が座っていました。
職業柄でしょうかこの年代の人には珍しく太っていなく(大半のフィジアン女性は太っています)、落ち着いて教養のありそうなとても気品のある方でした。
私は事件のあった木曜の夜からこれまで、身体を洗うことは出来ますが、傷のせいで頭を洗うことが出来ず、不快感はもう限界に達していましたので、ドクターに傷が閉じているからもう抜糸して欲しいと伝えました。
私は昔から傷の治りが早く、毎日ガーゼを変えながら傷が閉じているのを自分で確認していました。
南国フィジーは言うまでもなく毎日「暑い」ので、包帯を巻いているだけでも蒸れますし、塗り薬の鮮やかな紫色で頭が染まるのもいやでしたし、人からじろじろ見られるのが苦痛でした。
はじめに抜糸は1週間後と言われていましたが、幸いドクターはこれならいいでしょうと言って下さったので抜糸して頂きました。
ドクターにあなたは「タフガイ」だと言われ嬉しかったし、包帯が取れたおかげでとても開放的な気分になり、ルンルンでホテルに帰りました。
兎にも角にもまずシャワーだと思い、頭から思いっきり水を浴びました。
シャンプーをして傷口をさわって見ましたが、痛みもなくこれなら大丈夫と思いきや、指先に引っかかる変な感触がありました。
何かと思い合わせ鏡で傷口を確認すると、なんと一番端っこの糸が1本残っていました。
その時「やられた、やっぱりここはフィジーだ」と思いました。
せっかく素敵な女医さんに会えて嬉しかったのに、なんだか身体の力が抜ける思いでした。
もう一度病院へ行くかを考えましたが、それも面倒なので自分でハサミを使って糸を切りました。
縫合糸は釣り糸の様な結構太い糸でしたので驚くのと同時に、それがいまいましくも薬で紫色に染まっていました。
こんな太いしかも紫に染まった糸を見落とすなんて・・・
ちなみに当時の私の髪形は、限りなく坊主に近いツーブロックでしたので傷口は外にむき出しでした。
女医さんは老眼だったのでしょうか?
いろんな意味でフィジーは怖いです。